



Q.就労移行支援が合わない、意味ないと言われる理由
A.支援員の入れ替わりが多く、拠点によって支援の質を保つことが難しいから
現在、日本には、3,000を超える就労移行支援事業所が存在していますが、法改正により、事業所としての就職実績も問われるようになり、障害者の就職支援、そして、入社後の定着・活躍までサポート出来る力が無い事業所は生き残りが難しくなってきています。
一方で、就労移行支援事業所の職員の仕事はかなりタフな内容で、家族やプライベートも含めた相談支援に加え、就職に向けた訓練プログラムの実施、入社後の定着フォローなど、量も多く、支援の幅も広いです。

正直に言って、仕事内容と報酬はバランスが取れているとは言い難い現状です。
ですので、職員の離職率は結構高く、ある拠点では職員が1年で入れ替わってしまったという話も実際に聞くことがあります。
先日も、就労移行支援事業所の職員が

上層部は拠点展開を進めているが、もっと現場の負担を知ってほしい。現場の声に耳を傾けてほしい…
と切実に語っておられました。

このような状況ですので、なかなか職員のクオリティを維持・向上することは難しい面もあります。
A.社会人としてのビジネススキルに乏しい支援員もいるから
支援能力もさることながら、社会人としてのビジネスマナーが欠けているような職員も残念ながら在籍しています。
障害者採用のために会社説明会を実施することがありますが、その際に障害者と一緒に付き添いで来られた職員の服装がヨレヨレのシャツにジーパンだったりすることがあり、驚きました。

障害者の方はきちんとスーツでしたが…
A.ビジネスと福祉のバランス感覚が足りない支援員もいるから
本来、障害者を教育・訓練し、指導している立場の職員がそのような状態だと、そこで通所し、訓練を受けている障害者本人にも疑いの目を向けることになり、不利益でしかありません。
また、そういう職員に限って、入社後にトラブルが起こると、100%企業側が悪いという考えで立ち向かってこられ、ケンカ腰に文句を言われるので、本当に困ります。

安定就業の実現には、企業側の配慮も必要なのはもちろんですが、障害者からの歩み寄りもまた必要で、そのバランス感覚に偏りのある職員が一方的な文句を言うことで、かえって事態をややこしくしているということを認識してもらいたいです。
就労移行支援の質を上げていくために
障害特性を分かりやすく説明する
当然ながら日本の障害者の職場作りはまだまだ発展途上のため、企業側に至らない点があることは多いと思います。
だからこそ、一方的な文句ではなく、きちんと特性について説明いただき、どういった対処策が取れるのかを冷静に一緒に話し合っていただきたいと考えております。

もちろん、知識もあって、障害者の方の特性について分かりやすく説明いただける職員の方もいらっしゃいます。
※参照記事:おすすめ就労移行支援事業所とは?
面接同席では障害者が主役だと認識する
入社後も就労移行支援事業所の職員とは連携が必要ですので、採用面接の際には、出来る限り支援員にも同席してもらい、会社として支援員の人柄等も考慮しています。
基本的には、穏やかでビジネスマナーも備えていらっしゃる職員とお会いすることが多いのですが、たまに障害者の方の面接の時間なのに、職員自身がペラペラと語り出し、障害者本人の力量を判断することが出来ず、障害者の選考判断の妨げになってしまっているケースもあります。
ですので、私の場合は、

最後に職員の方にもお話を伺う時間をいただきますので…
と断っておき、面接の時間中は、障害者本人と話をしたいという趣旨を伝え、ご理解いただいています。
就労移行支援に伝えたい視点とは?

就労移行支援事業所に通所しながら就職活動に取り組む障害者にとって、事業所の職員の存在はとても大きいです。
障害者の就職活動に関する助言や、障害に関する自己理解の支援、家族やプライベートも含めた相談にも乗り、長期間に渡って障害者のサポートに取り組みます。
また、就職が決まり、就労移行支援事業所の通所が終わってからも、定期的に職場に来てフォローしたり、障害者本人の方が就労移行支援事業所に出向いて話をするなど、通所していた期間だけでなく、卒業後(就職後)も付き合いは続くので、その存在は大変大きいものだと感じています。

そういった役割を担っているので、例えば、お世話になっていた職員が辞めてしまうと、既に就労移行支援事業所を卒業して無事に就職した障害者がメンタル的に不安定になって、場合によっては、退職してしまうことがあったりするくらいです。
職員の助言を妄信させてはならない
このように職員の存在は、通所している障害者にとって大変大きなものではありますが、一方で、その存在の大きさゆえに、職員の話を絶対的に信じてしまう傾向も強いように感じています。
障害者本人がどう考えているか?
より、
職員が良いと思っているかどうか?
が常に優先されてしまうと、少しバランスが悪いように思います。
自分の意見や気持ちもしっかりと持ちつつも、相手の考えも受け入れるバランスが必要だと考えています。
ただ、ある職員から、

通所される障害者の皆さんは、良くも悪くも、私たち職員の話を鵜呑みされる傾向があります。職員の考え方が絶対正しいわけではないので、通所者にも気を付けてもらいたいし、我々も自戒しなければならない。
という話を聞いたりもしますので、バランス感覚を持って向き合っておられる職員がいらっしゃるのも事実です。
企業側の視点を持つことが大切
私も障害者雇用に携わる者として就労移行支援事業所と関わる中、職員からの依頼で通所されている障害者の方々に対して、企業側の視点(「企業が求める人材とは?」「面接で大切なこととは?」等)をお伝えする機会があります。
職員から、

わたしたち職員が話すより、実際に企業担当の方から企業としての視点をお話された方が説得力もあり、我々職員にとっても勉強になります。
と言っていただき、

あくまで私の考えですが…
とお伝えした上でお話することがあります。
就労移行支援事業所でお話をした後、

通所者の〇〇さん、お話を聞いてから姿勢が変わり、就職活動により一層前向きになりました。感謝しています。
との言葉をいただき、実際に内定を獲得された報告を聞くこともありますので、微力ながら障害者の方々の一助になれたのなら、嬉しい限りです。
私自身、障害児の親であり、障害者の活躍を願う一人ではありますが、重症心身障害児の娘は寝たきりで言葉も出ない為、就労自体が厳しいのではと覚悟はしています。

しかしながら、就労移行支援事業所に通所されている障害者の方々は、働くチャンスがあります。
通所されながら、就職を目指して頑張っている障害者の方を見ると心から応援したくなります。
それは、その障害者の方のそばにいる家族の存在を考えてしまうからかもしれません。

この方の親御さんや、祖父母、兄弟、多くの方がこの方の幸せを願われているのだ…
そんなふうに、目の前の障害者本人だけでなく、その家族の気持ちまで想像してしまうからだと思います。
また、これは本当に自分勝手な感情なのですが、障害者の方が女性だと、自分の娘が成長した姿で頑張っているような感覚を持ってしまい、一生懸命に話をされている時に、目頭が熱くなってしまって焦ったこともあります。
外部の人材サービス会社との連携
あくまで、私が現状の課題として感じていることですが、就労移行支援事業所の就職支援は、まだまだ企業視点や外部の人材サービス会社の就職・転職ノウハウが取り入れられていない印象です。

障害に対する自己理解の促進や、生活面も含めた相談支援のノウハウが豊富な一方、求人開拓や就職ノウハウ、長期的なキャリア支援については、発展途上のところが多いように感じています。
もっと、外部の人材会社と連携して求人情報を意欲的に収集し、通所者の方の選択肢を増やす取り組みが必要ではないでしょうか。
また、求人情報だけでなく、人材ビジネスで得たノウハウを上手に取り入れ、通所時の訓練プログラムに生かしたりするなど、もっと風通し良く、様々な立場からの情報を収集・活用し、障害者の成長につながることは積極的に取り入れる柔軟性が求められていると考えています。
▼企業担当がおすすめする就労移行支援事業所とは?